海軍に就職6

海軍へ就職

「なあ、みんな、今日の航空本部長の訓辞に少しおかしなところがあったよなあ。あの訓辞の中でなあ、諸君の同僚の中には、最下級の工員の身分に甘んじて海軍工廠への就職を志願するものが多い時世であるのに、諸君は海軍に入ったその日から既に高等武官である。有難く思って職務に勉励しろという意味の文句があったろう。あれはおかしいよなあ。他人がどうしようとオレの知ったことではないんだが、オレは卒業したらすぐ中尉にすると海軍が約束して募集したから応募しただけの話で、中尉にすると約束しておいたが、都合によって大尉にしてやるから有り難く思えというなら話は分かるが、契約通りに実行したから有り難く思えとは何事だ。どや、みんなそうは思わんか」

猪村が言いたかった内容と全く同じであった。猪村は嬉しくなって、

「そうだよなあ、まったく大山中尉のいう通りだよ」 と全面的に賛成した。他の連中はただにやにや笑っているだけだった。

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