レーダー5

レーダー

いつもの自分の流儀

猪村は、いつもの自分の流儀に従って、送られてきたレーダーの梱包を解いて工廠内で仮組み立てし、検査を開始することにした。

現場工事の指揮官として未熟な造兵中尉をウェーキ島とラボールへ各一名派遣しなければならぬので、検査の機会を利用して彼らにレーダーの調整法を教育しておく必要がある。

また現地では工事材料を調達することが出来ないので、送り忘れ品が無いように荷作り発送前に徹底的にチェックして置かねばならぬ。

何回かの陸上工事の経験で猪村はこういうチェックには熟練している。今回現地へ派遣する造兵中尉どもにこのチェックの要領を伝授し、猪村の監督の下に彼等自身で点検させておかねばならぬ。



こういう作業を済ませてウェーキ島へは何日発の便船に、ラボールへは何日発の便船に、工事員と機材とを乗せる予定で作業を開始した。

艦政本部からの問い合わせで、猪村の予定を知らせた所、それは遅すぎる、もう一便前の便を利用しろ、十分間に合う筈だ、現地はレーダーの装備を首を長くして待っているという。

猪村の方は、新兵器であるので、よく試験して確認しておかぬと、現地で何かが起こった時適当な処置ができないから、予定を変更できないという。

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