英独戦争の戦勢を逆転させる原因の一つ
電波の反射によって距離を測定する装置は日本でも米国でもレーダーよりずっと以前から使われていた。日本の海軍技術研究所でも米国の海軍技術研究所と同じように電波を上空に向けて発射し、イオン化層からの反射波を受信してイオン化層の高さとか各種の電波に対する反射率とかを測定していた。短波を利用する無線通信で、どういう状態でどういう周波数を使えば確実に通信できるかを決定する資料は、このイオン化層の測定によって得られる。
日米海軍共このような基礎資料は軍事秘密とは考えておらず、測定装置も測定結果も学術雑誌等に公表していた。昭和七年頃、日米海軍共に測定装置を改造して、発射電波の形式を距離測定に便利なようにパルス電波式にした。
イオン化層の高さは百キロメートルから二百キロメートル程度だったが、このイオン化層測定装置の電波の波長を超短波にし、パルス幅を狭くして数キロメートル から数十キロメートルの距離の飛行機からの反射波を検出するように改造すれば、最初の世代のレーダーが出来上がる。然し、このようなレーダーを実際に製造して使用したのは英国が最初である。
昭和十四年頃にはドーバー海峡に臨む英国の海岸地帯のレーダー網建設は完了していて、ドイツから英本土空襲に発進したドイツ爆撃機が、正確な位置で待ち伏せしている英国戦闘機に攻撃されて毎回重大な損害を被り、英独戦争の戦勢を逆転させる原因の一つになる。毎回重大な損害を被りながら、ドイツが英国のレーダー網に気がつくのは長い月日が経過した後である。
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