済州島10

済州島

馬の相撲

始めは鳥の写真をとろうと色々工夫してみたが、鳥の写真は中々思うようにとれなかった。そのうち、済州島の蒙古馬に興味を感じて放牧された馬の生態の写真を沢山写した。こちらの方は素人でも容易に面白い写真がとれた。

「交尾期の写真を沢山とりましたが、滅多な方にはお見せできないのですが」と笑いながら校長さんは交尾期の馬の行動について説明した。

交尾期には牡馬を中心に牝馬のハーレムが形成される。大きなハーレム、小さなハーレム、牝馬にありつけないチョンガーの牡馬など色々である。当然、牝馬の争奪戦が起こる。それが争奪戦というより、ルールがきちんと決められたスポーツのフェアプレイみたいなもので、牡馬が傷つくこともなく、何ともはやまことに穏やかな平和裡にハーレムの主の交代が行われる。「あんな簡単な競技でハーレムの主が交代して、適者生存の法則が達成できるんでしょうか。闘争をしないで、競技で決定するというような知恵は神様から与えられた本能なのでしょうか、それとも馬の社会が長年の経験によって得たものでしょうか。動物の社会を観察すればするほど私には分からぬことばかりです」と校長さんは話した。



あんな簡単な競技というのは馬の相撲である。挑戦者と、受けて立つ者との二頭の牡馬は約三十メートルの距離をとって互いに向き合う。一せいに駆け出して二頭が衝突する距離になると互いに後肢で立ち上がり前肢を相手の首にかけて、先に相手を横倒しにした方が勝者となる。校長さんの見たかぎりでは一回勝負というルールは厳重に守られているらしく、倒された方はすぐ起き上がって足早にその場を去る。

新たにハーレムの主になった牡馬は、ハーレムの牝馬の中から選んだ一頭の牝馬を追う。牝馬は逃げる。然し、追う牡馬がくたびれるような逃げ方は決してしない。時々後ろを振り返ったり、立ち止まったりして牡馬を待つ。

「これは、一種の儀式だと思いますが、なんのためにこういう儀式が行われるか、これも全然わかりません」と校長さんは言う。

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