済州島6

済州島

ビール1ダースの賞品

南条さんはこの航空隊の護衛戦闘機隊の隊長である。済州島から南京までは戦闘機の航続距離が足りないので、今は基地に留まっているが、敵の空襲によって地上の攻撃機を破壊されないように常に戦闘機が上空にあって見張りをしている。

見張りをしている間を利用して空中戦闘の訓練をしている。中々猛烈な訓練である。戦闘機の訓練では実弾は発尉されぬが、機関銃(海軍では機銃と言っていた)の引き金を引いた時の目標機の姿が写真に写る。

この写真を現像して、空中戦闘の勝敗を判定することができる。南条さんは部下と空中戦闘の演習をするとき俺を撃墜したらビール1ダースの賞品を出そうと約束していたそうである。



その翌日、猪村は南条さんと二人で長話をした。士官室の扇風機がものうく回っている暑い日だった。士官室には他に人影はなく、士官室従兵が時々南条さんと猪村とに冷蔵庫で冷やした水をコップについで御馳走してくれた。

猪村は昨日の話の続きとして、無線機材を全部空輸し、機材の到着後五日間で据付を完了するには、現在の機材をどういうふうに改造しておけばよいかという案を話した。こんな話は南条さんには興味のない話であろうが、猪村の話を聞いてやろうという南条さんの誠実さにつられて猪村も長々と話をした。

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