開戦7

開戦

武装のない日本商船だけを狙ってちゃんと成果を挙げている

それに比べると、米国の方が遙かに上手だ。

横須賀軍港から余り遠くない場所に潜航していて、日本の軍艦にはしばしば出会っている筈であるが、軍艦がきたときは身を潜めてじっとしているか ら発見されてない。

そして、乗員の練度は日本の潜水艦乗員の練度に比べると遙かに低く潜水艦自体の性能も落ちているにかかわらず、武装のない日本商船だけを狙ってちゃんと成果を挙げている。

日本の潜水艦に対しても、敵の軍艦を攻撃するなという命令を出しておくべきである。

梅木参謀は温厚な紳士で、猪村の言うことを黙って聞いていたが、にこにこ笑いながら、「猪村君の言う通りかも知れんね。

しかし、工廠の造兵少佐や鎮守府の通信参謀が潜水艦作戦にまで口だししてもどうにもならんからなあ。

そちらの方はその道のオーソリティに任せておいて、自分達は自分達に課された仕事に精出そうじゃないか」 と言っただけである。

そして、これはまことに尤もな話で、猪村としては一言も返す言葉がなかった。然しそれから今日に到るまで、猪村はその道のオーソリティの判断は信用しないことにしている。

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