天測航法7

天測航法

船から「島見ゆ」という電報が来た

横須賀鎮守府からの指令通り航行していた船から「島見ゆ」という電報が来て、その島の山の形を報告させ、その山の形からそれがガム島であると判断し、「貴船から見える島は米国領のガム島なり。その島には近寄らずサイパンに入港せよ」という電報を出して猪村はやっと安心した。

サイパンには天測用具を持った海軍予備中尉が飛行艇便で行って待機していたから、それから後はその予備中尉が船長を勤めてウヲッジェ島に到着、ケーブル敷設を済まし無事横須賀に帰港した。

ここでついでに海軍予備中尉について説明しておくが、これは予備役の海軍中尉ではない。高等商船学校(現在の商船大学)の航海科の卒業生は全員海軍予備生徒に任命され、海軍砲術学校で訓練され(機関科の卒業生は海軍機関予備生徒に任命され、海軍工機学校で訓練されたのだと思う)

訓練終了後海軍予備少尉に任官し、商船の航海士や船長として勤務経験を積むにつれて予備中尉、予備大尉、予備少佐と進級してゆく。

予備少尉時代には海軍に召集されて海軍部内で勤務していた人もあり、猪村の乗った戦艦のガンルームには予備少尉がいた。兵学校出身の海軍少尉と全く同じ仕事をしているが、帽子の記章や襟章、肩章などで普通の海軍士官のものには桜の花の図案の記章がある所に予備士官のものには羅針儀を図案化した記章があった。



猪村の仕事の為にマーシャル群島まで行ってくれたこの海軍予備中尉は、他の仕事の為に召集されていた人であるが、その本来の仕事がまだ始まっていなかったために、マーシャル群島行きの仕事を命ぜられたのである。

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