天測航法6

天測航法

サイパンで天測要員と天測機材を乗せ、必要な補給をして再出発

決心を定めた猪村は横須賀鎮守府へ出向いて通信参謀の梅木中佐に頭を下げることにした。梅木参謀は猪村と船との間に交信した電文はすべて目を通していたので、猪村の顔をみるなり、

「困ったなあ、どうしよう」と話しかけてきた。

「横須賀鎮守府管下の全部の短波方位測定所の合同演習をやっていただきたいのですが」 「それはいい案だ。それで、ウヲッシェ(マーシャル群島の中の目的の島の名)まで誘導するのか」

「いや、それは危ないです。方位測定精度がそれほど良くないですから。逆にサイパンまで連れ戻して、サイパンで天測要員と天測機材を乗せ、必要な補給をして再出発させたいと思います。方位測定精度が悪くてサイパンに連れて行けなかったような万一の場合は、サイパンと覚しきあたりから北上させて日本列島にぶっつかるように誘導して下さい。燃料と食料とは往復分に相当な余裕を 持っていますし、日本列島に近づくほど位置決定精度は良くなります」

「そうしよう。それなら安心だ」ということになって、船からは所定の時間ごとに送信させ、各地の方位測定所で方位測定させ、測定結果を横須賀鎮守府に集めて球面三角法の計算により船の緯度、経度を算出して船に知らせてやりサイパンへ向かって航海するように指示した。



横須賀鎮守府管下の方位測定所でこの演習に動員されたのが七ヶ所だったが、七ヶ所のうち四ヶ 所か五ヶ所の測定結果は常に信用ができ、球面三角法の計算によって算出した四本か五本の線の交点は割合狭い範囲内に集まった。

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