心配は途中で荒天に会わないか、環礁内の狭い水道を上手に通りぬけるかという点である
南洋群島まで回航してマーシャル群島の環礁の間を抜けてその内海まで入れることを条件として、速力、航続力の下限を指定して徴傭船を捜して貰うと、鎮守府ですぐ見付けてくれた。
船長は東北人らしい口の重い実直そうな男である。
猪村が、かねて用意しておいた軍機海図を見せて、この二つの島の間から環礁内の内海に入れますかと聞くと、これだけ広ければ大丈夫ですという。
猪村が期待していたより小さい船なので、南洋群島まで行って、荒天に会って大丈夫ですかと聞くと、荒天には今まで何回も会っていますが、この船はその点大丈夫ですという。
無線を持っていない船なので、横須賀鎮守府の通信参謀梅木中佐に頼んで横須賀海軍通信隊の電信下士官二名に乗船して貰う。
海底電線を積み込み、ケーブル敷設のための特別ぎ装と携帯用無線電信機装備のための簡単な改装をした後、工廠側からは海底電線敷設工事要員として総務部の運搬工二名を乗せて出航させる。
島の無線電信所建設のための工事員は大石工手が引率して先の便で出発している。
大石工手は水中聴音機の沈設工事を何回か監督しているので、現地では大石工手が指揮し二名の運搬工が中心になってケーブル敷設を短時間で完了することができる。
猪村の心配は途中で荒天に会わないか、環礁内の狭い水道を上手に通りぬけるかという点である。
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