海軍の一大弱点
然し、この日は南条さんの方も猪村に何か話したかったようだった。
「君の所ばかりじゃないよなあ。大体、飛行場を作るのが建築部というお役所だからなあ。建築部というお役所は海兵団の兵舎を建築するような仕事を引き受ける所だから、滑走路を作るような土木工事は得意でないだろう」
説明を加えておくと、海軍省には建築局というお役所、各鎮守府には建築部というお役所があった。これらのお役所は建築技術が専門で土木工事は余り得意でなかったと思う。支那事変中、陸上航空基地の建設作業が多くなって、内務省の土木技師が相当多数海軍技師として海軍の建築部門の中に入ってきた。
しかし施設科士官の制度のできたのは日本軍の敗色も濃くなった戦争末期である。土木の機械化の研究などをやる部門は日本の海軍の中には存在しなかったように思う。
ガダルカナルの敗戦史などを研究する場合には土木工事能力の優劣の比較を明らかにしなければなるまい。軍艦で戦争することを主眼目にしていた習慣から抜け切れなかった海軍の一大弱点である。
それにしても、陸軍では昔から土木作業が重大な戦闘行為であった筈である。陸軍の飛行場建設能力はどうだったのであろう。
コメント