海軍省のお役人
戦争をする海軍には無駄なものは無かった。その頃の聯合艦隊は第一艦隊と第二艦隊とから編成されていた。当然、第一艦隊司令長官とか第一艦隊参謀長とかいう配置は存在する。然し、第一艦隊司令長官は必ず聯合艦隊司令長官が兼務し、参謀長以下も全員兼務である。第二艦隊指令長官と第二艦隊参謀長官というのは実在する。それは聯合艦隊が二分して第一艦隊と第二艦隊とが別々の海域で戦闘するとき、第二艦隊の方は第二艦隊司令長官が指揮する。このとき第一艦隊の方は聯合艦隊司令長官が指揮するので、その場面に第一艦隊司令長官などがうろちょろしていたのでは邪魔になるばかりであるし、聯合艦隊司令長官がお高く構えて、
「俺の方は第一艦隊と第二艦隊の両方の戦闘を総合的に指揮しなければならぬから、第一艦隊は第一艦隊の司令長官が指揮してくれ」などと言うことはない。自分の目の届かない第二艦隊のことなどどう心配しても何の益もない。
然し、海軍省のお役人どもは考えるのである。
「せっかくの配置があり、艦隊の司令長官になりたい男はわんさといるというのに、その配置を利用しないのは惜しいことだ」と。
こういう考え方に似たような思考から駐満海軍部は誕生したのであろう。存在理由は立派に説明できる。そして議会を楽に通過し、こうして海軍中将のポストを一つ作ったお役人は出世する。
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