海軍での宴会費はすべて割り勘
造兵会は度々開かれたが大抵は水交社(海軍士官の集会所)の一室で簡単な夕食が出るという質素な会だった。そこはかとない世間話をするだけの会の時と、予め指名された会員が時事問題、技術問題について簡単な話をする会の時とがあった。
なごやかな雰囲気で会費も安かったので特に差し支えのある人以外は大抵出席した。造兵会ばかりでなく、海軍での宴会費はすべて割り勘で半額平等割り、半額給料比例という計算だった。
猪村達が造兵中尉に任官して海軍砲術学校へ入校した春、猪村達を歓迎する造兵会があった。その席上、二人の造兵中佐が実に上手に掛け合い漫才をやってのけた。短い時間で、何時漫才が始まったのか何時終わったのかもわからぬようになだらかな会話が流れて行ったが、確かに上手な掛け合い漫才である。猪村はほとほと感心して、隣席の造兵大尉に、
「うまいもんですね、事前に練習して来られるのでしょうか」とたずねてみた。 「まさか。然し、あの二人は同期で中技士(昔は海軍造兵中尉とは言わないで海軍造兵中技士と言った。海軍造兵少佐は海軍造兵少監だった)に任官して以来機会あるごとにああした掛け合い漫才をやっているから上手にもなるよ。那須、清田の漫才コンビといえば造兵会では有名だよ。あれがあるから横須賀造兵会は入りがいいんだ」という説明だった。
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